古来より,実に沢山の人が「生命」について思慮を巡らせてきた。今日のところは岩崎秀雄『<生命>とは何だろうか』(最も新しいので奇妙な感じではある)を読んで考えを述べていく。
岩崎先生は,著書で合成的な考えの源流をたどり,歴史を振り返っている。キリスト教的世界観,細胞説,自然発生説の否定というドグマにあって,それへの批判という形で,古くより唯物論者たちは生物の構成的理解を目指してきた。1960年代には,柴谷が生物人造論を打ち出しているものの,生物学の枚挙的な性格ゆえ,合成的アプローチが主流にはならなかったのである。一方,1980年頃から人工生命(AI)が脚光を浴びるようになり,生命らしいと思われる普遍的な振舞いを構成的に表現することが課題になった。分子レベルの知識の蓄積も相俟って,システム生物学・合成生物学へと発展したのである。